
ご自宅の庭にブルーベリーを植えてる方が「小粒で酸っぱい実がなってしまうんです」とお話しされることがあります。もしかしたら、それは剪定に原因があるかもしれません。
私たちブルーベリー農家の冬は、ほぼ「剪定作業」をしています。他の果樹と同様にブルーベリーの樹もしっかり剪定することでたくさんのメリットがあります。皆さんのお庭に植えてあるブルーベリーも適切に選定することで、美味しいブルーベリーが収穫できるようになるかもしれません。
さてさて、ブルーベリーはどんな剪定をすればよいのでしょうか?なぜ剪定が必要なのでしょうか?ぜひ最後までご覧ください。
剪定に必要な準備物

事前に準備したものはこちらです。
- 剪定ばさみ
岡恒 剪定鋏ばさみ(200mm NO.103) - 剪定ばさみカバー
これも岡恒製 - 切り口保護剤
トップジンMペースト - 消毒用アルコール
アルコール70%以上がオススメ
食品にも安全なアルコール「ドーバー パストリーゼ77」を使用しています。
ケースは100均
この他に、ハサミ用砥石、ヤニ取り剤、さび止め用の刃物椿油、軍手を準備しました。
【参考記事】昨年の剪定記事▼
「芽」の違いを知ろう

ブルーベリーの枝にたくさんの芽がついています。よく観察すると、2種類あるのが分かります。
丸くぷっくりしているのが、「花芽」
シュッとして尖っているのが「葉芽」です。
花芽は将来、花が咲き、ブルーベリーが実ります。
葉芽は、葉や枝になる芽ですね。
剪定では、枝ぶりの調整も必要ですが、この「芽」の扱いがとても重要になります!
どんな枝を切ればいいの?

では、さっそく剪定をしていきましょう。
ブルーベリーの樹をよく見ると、この夏にブルーベリーがなっていた小枝が見つかります。写真のような枝の先が枯れている弱々しい小枝です。
これらは、次のシーズンには新芽を出さないので、根本から剪定します。

また、このようなマッチ棒サイズの小枝がたくさん伸びているかと思います。
こちらもマッチ棒の根本から剪定しちゃいます。
枝の先には「花芽」がついているので、残しておくと花が咲き、ブルーベリーが実ります。でも、このような弱々しい枝の先に実るブルーベリーは、あまり良質ではないので、残す必要はないです。

よくよく見ると、この枝は、マッチ棒サイズの小枝しかないようなので、思い切って枝の根本から剪定しちゃいました。

時には思い切りも必要?!
ブルーベリーの根本付近に生えている小枝も剪定してしまいます。
このとき、ハサミを入れる場所は、枝の根本がよいでしょう。中途半端に残してしまうと、そこからまた新しい枝が生えてくる可能性があります。

また、根本をスッキリさせることで、カミキリムシの幼虫を見つけやすくなりますね。
まず、この3つのポイントを守り、どんどん剪定していきます。

これだけでもだいぶスッキリします。
小さな枝を剪定した後は、樹全体を見通した剪定になります。主に「「樹形を整える」の剪定になります。
剪定する枝の見極め方として、その枝の先端を観察すると分かります。
例えば、先にいくに従って、弱々しくなっている枝や先端が枯れている枝などは根本から剪定してよいでしょう。もしくは、その枝を2/3ほど切り戻しましょう。
中には、マッチ棒サイズの小枝ばかりの枝があります。たとえ「花芽」があったとしても、それは枝の根本から剪定しても問題ありません。
他に具体的な剪定としては…
- 内向枝(内側に向かっている枝)、交差枝(多くの枝と絡み合っている枝)をカット
- 高すぎる枝をカット
- 極端にはみ出している枝をカット
- 混みいっている枝をカット
- いろいろな方向から見て、バランスの悪い枝をカット
- 葉芽が向いている方向に枝が伸びていくので、上向きの葉芽を残してカット

どんどん剪定を進めてしまい、「花芽」をほとんど取ってしまうとブルーベリーの収穫が少なくなってしまうので注意が必要です。
枝を剪定した後の切り口には、保護剤としてトップジンMペーストを塗ります。
これは、切り口に塗ることで、すぐに雨に強い殺菌保護被膜ができるそうです。こうすることで、亀裂、 雨水や雑菌の侵入を防ぐことができ、病害の感染を防ぐ効果があるそうです。
忘れちゃいけない
ひとつの樹の剪定が終わって次の剪定に移る前に、忘れてはいけない作業があります。
それは「消毒」です。

アルコールでシュッとひと吹き。万が一の病気の流行を予防します。

当農園では、食品にも使えるアルコール消毒液を使用しています。濃度は70%以上です。
剪定が必要な理由は?
さて、どうして「剪定」が必要なのでしょうか。いくつか理由があります。
- 樹形を整える。
- 風通しをよくして、病気・害虫の被害を予防する。
- 樹の生長を促進させ、ブルーベリーの実の質を上げる。
それぞれ詳しくみていきましょう。
樹形を整える
ブルーベリーは低木とはいえ、全く剪定をしないと身長よりも高くなります。また、横にもどんどん広がります。
※品種によって違いはあります。
当農園はブルーベリー狩りの観光農園ですので、高い場所に実ったブルーベリーを収穫することが困難になります。お客様のちょうどいい高さになるように、高さを調整したり、横に広がりすぎないように調整しています。
また、横に広がりすぎると、ブルーベリーの実の重さで枝が折れたり、実が地面についたりしてしまいますね。
樹形を整える方法として、「誘引」があります。日当たりの悪い枝や、バランスの悪い枝などを、支柱と紐などを使い、整えます。

強めに誘引すると、枝が折れてしまいますので、要注意!
病害虫の予防
ブルーベリーは、放っておくと、たくさんの葉で生い茂ります。
剪定をしないと、葉が混み合い「風通し」が悪くなります。そうすると、害虫の棲家になったり、害虫に気が付かなかったりしてしまいます。

見えない奥のほうにアシナガバチが巣を作ってしまったことがありました。
つまり、放っておくことで、樹が病気になる、害虫の被害にあう、などの悪影響がでてしまいます。
樹の生長促進と実の質向上
剪定することで、樹の生長が促進されます。
それには、「光合成」と「花芽の調整」がポイントになります。
風通しがよくなり、全ての葉に光が当たるようになると、「光合成」が盛んに行われるようになります。そうなると、樹の生長が促進され、もちろんおいしさも実にぎゅっと濃縮されますね。
では、「花芽の調整」はどうして必要なのでしょうか。

花芽をたくさん残した方が、ブルーベリーをたくさん収穫できるんじゃない?その方がいいと思うけど?

実は、調整することでメリットがあるのです。
花芽を多く残すと、それだけブルーベリーが実るので、収穫量が上がってよさそう感じますが、そうではありません。多すぎると、かえって樹が弱ってしまう原因のひとつとなってしまうのです。
光合成や根から吸収した栄養分は、樹の生長と共に、花の生長にも使われます。
花芽が多すぎると、樹の生長<花芽の生長となってしまい、樹の生長が後回しにされ、樹そのものの勢いが衰えてしまいます。結果的に樹が弱ってしまうことになります。
また、栄養分が多くの花芽に分散してしまうことにより、ひとつひとつの実が小粒になり、味も落ちてしまうのです。

例えば、ひとつの樹の栄養が「100」だとしましょう。
ブルーベリーの実が100個なった場合、ひと粒あたりは「1」となります。でも、実を10個になるように調整したら、ひと粒あたり「10」となりますね。甘さも質も大幅にアップします。
(これは極端な例え話です)
ひとつの樹にどれだけ花芽を残すのか…。
品種や樹齢、それぞれの樹にもよりますので、明確な「答え」を出すのは難しいです。
つまり、花芽の残し方はツクリテの考え方次第、ということになります。

大粒で甘いブルーベリーが実るように、考えながら剪定しています。
花芽をどれだけ残しておくかで、次のシーズンの収穫量が決まります。
まとめ
- 小枝はどんどん剪定しよう
- 芽の種類、枝の先端を見極め、不必要な枝を剪定しよう
- 樹全体の風通しがよくなるようバランスを見ながら剪定しよう
- 美味しいブルーベリーのために剪定しよう

私たちも、まだまだ駆け出し。日々経験を積んでいます。
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